土・日曜日と、1ヶ月ぶりに実家へ帰省した。
父はゴールデンウィークの期間、母の介護疲れ軽減のために一時的に病院へ預かってもらう”ショートステイ入院”をしていたので、実家で父と顔を合わせるのは久しぶりだった。
足首から下がいやに浮腫んでいて、触ってみると、かなり熱っぽい。
母に聞くと、入院から戻ってきた直後の5月中旬から微熱が続いていて、平熱に下がらないということだった。
検査しても、発熱に関係する一般的な原因は見つからず。
考えられる理由としては、自律神経の働きをコントロールできなくなり、体温調節に問題が生じていることによる発熱。
これが原因であれば、ALSという病気の性質上から納得がいく。
しかし、もしこの理由が本当だとしても、治療方法が無いのがALSという病気の現状。
とりあえず、毎日抗生物質を投与して様子を見ているしかないらしい。
何も出来ないというのは、もどかしい。
抗生物質のほかに、対処方法として食品保存用に凍らせた保冷材をタイルでくるんで、脇の下に差し込んでおくということをしていて、一定の効果は上げているようだった。
嚥下能力がほとんど無いので液体を飲み込むことが出来ず、のどの渇きには氷を1個口に含んでもらうことで対処している。(氷の大きさは、一般的な製氷皿の升目一個分)
ただ、今のところ氷の溶けた水分を飲み込むことは出来るのだが、口腔内に溜まった唾を飲み込むことが出来ず、吸引器で吸い出さなくてはいけない。
父は気管切開して人工呼吸器を装着しているので、声を出すことが出来ない。
以前は、ある程度無理をすれば声が出せるタイプの気管カニューレを装着していたのだが、肺炎の初期症状を引き起こす不具合を生じたため、現在は完全密閉型(発声不可)の気管カニューレに切り替えている。
そのために発声が出来ないのだが、発声が出来ないということは、意思疎通に重大な障壁になる。
文字盤を使用しての意思疎通に限界を感じて
伝の心を導入したのだが、父には扱いが難しいらしく、使いこなすには程遠い状態が続いている。
仕方なく口唇術を使って読み取ろうとするのだが、これが難しい。
超難解という表現がぴったりで、時間をかけて読み取ろうと努力しているうちに汗をかき始めるくらい難しい。
まったく読み取ることが出来ない場合、文字盤を使用して導入部だけを何とか読み取ることで全体が分かる場合がある。
先に書いた、口腔内の唾を吸引器で吸い出す作業を要求されたときには、”口”までは理解できたのだが、そのあとが分からない。
父が吸入器の方へ目線を向けるのだが、それでも私は理解できない。
どうしても理解できず、四苦八苦している私の元へ母がやってくると、父と私のやり取りを見てすぐに口腔内の吸引だと気が付いて処置を始めた。
普段からこのような作業をしていれば、”口”と”吸入器へ視線を向けた”の2点の条件が揃ったところから容易に想像がつく。
私は、その作業を見るのは初めてだったので、まったく分からなかった。
申し訳ない。
意思疎通の手段がないというのは、本当につらいものだ。
まあ、
エンシュアリキッドのおかげか、父の顔色や肌つやはとてもよく、顔だけ見ていれば病人に見えない元気な姿を見られたのは救いだった。
身体は動かないが表情は死んでいないし、あの顔色ならまだ大丈夫。
安心した。